Archive Walker

歪んだ鏡

二〇二三年八月十四日

歪んだ鏡

冷えたスプーン

二〇二三年八月十四日。僕は、酔っぱらった顔のむくみを直そうと、冷えたスプーンを顔のうえで転がしていた。このとき、ポーの描いた楕円形の肖像画のように、生気がスプーンに吸い取られるのを感じたのだろう。まるで、ヤン・ファン・エイクのの凸面鏡が風景を盗んでしまうようなものである。僕はこう書いていた。

ポー傑作選2

山地大樹

鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番に恥ずかしいのは誰?

鏡をみた、いつも通りの自分が写っていた。顔を変えると鏡に移る自分の顔も変わる。空を飛びながらセックスしたいと叫んでみる。鏡の中の自分は叫ばず、僕の声だけが響く。なぜ真似してくれないのだろう。 鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番に恥ずかしいのは誰? それはあなたです! 鏡が声を荒げた途端、鏡のなかの僕の顔は、スプーンに移ったかのような楕円形に変形してしまった。楕円形の僕の顔の美しいものだから、身惚れているうちに死んでしまうだろう。

季山時代
2023.08.14