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タナトスの涙

二〇二三年八月二十六日

タナトスの涙

知らないひとの自殺と知ってるひとの涙

二〇二三年八月二十六日。僕は河川敷で花火でもしたいと空想しながら、いつも通りの朝をはじめていた。なんてことない日常であり、その数日前のある有名人が自殺したことなど知る余地もなかった。夜、知人からの電話に出た僕は、有名人の自殺を知ると同時に、知人がその有名人をとても愛していたことを知った。僕は、いつも抑圧するようにしている死の問題が噴出したのか、動揺していたようである。僕はこう書いていた。

山地大樹

タナトスの涙

知人の愛する人が自殺したことを知った。僕は自殺した人を知らなかったが、床が水浸しになるほど泣いている知人を見た。おさえても、おさえても、決して止まらない涙が美しくて、僕は僕がいなくなってしまう気がした。生か死か、僕は選ばなくてはならない、どちらかを。

殺してくれ、待て、殺さないでくれ、いや、やっぱり殺してくれ、死にたい、死にたい、待て、やっぱり死なない、生きてやる、生きてやるんだ、等々。

愛してくれ、待て、愛さないでくれ、いや、やっぱり愛してくれ、恋したい、恋したい、待て、やっぱり恋しない、愛してやる、愛してやるんだ、等々。

季山時代
2023.08.26