真実とナイフ
二〇二四年一月四日
真実とナイフ
ナイフで指を切る
二〇二四年一月四日。僕は届いた段ボールを開けようとして、カッターナイフて指を切っていた。小さな傷なのだが、絆創膏の白い部分に血が滲んでくるから、絆創膏を何度か取り替える必要があった。この出来事をつうじて、カッターナイフが何かを切り裂きたがっているような印象を受けたのだろう。ちなみに、不意に頭のなかに浮かんだのは、「僕が真実を口にすると、ほとんど世界を凍らせるだろうという妄想によって、ぼくは廃人であるそうだ
」という詩人の歌と、「そしてナイフを持って立ってた」と叫び続ける、あるロックバンドのメロディーである。僕はこう書いていた。
山地大樹
真実とナイフ
真実はナイフである。ナイフは真実でないものを鋭く切り裂くだろう。当然、そんな出来事は世界中の誰一人として望んでいない。誰も何かを切り付けたくないし、誰も何かを切り付けられたくない。それでも、ナイフは確実にある。ナイフはこの手のなかに握られている。手のなかのナイフは暴れていて、何かを切り裂こうとしている。またあの声が聴こえてくる。
なにも傷つけたくない
だれも傷つけたくない
ナイフを何度も手放そうとする。山に埋めて、海に沈めて、それでもナイフは帰ってくる。地面を切り裂いて、水面を切り裂いて、この手のなかに戻ってくる。この手が故郷だとでもいうように。仕方がないから、ナイフをみずからの心臓に向けるしかない。手のなかのナイフは暴れていて、何かを切り裂こうとしているのだから。すると、またあの声が聴こえてくる。この心臓は誰かの何かであるから、切り付けることは許されないとでも言いたいのだろうか。
季山時代
2024.01.04
