めろんと自転車
二〇二四年一月二十日
めろんと自転車
ゴミ袋とメロンの網目
二〇二四年一月二十日。僕は、都市に捨てられたゴミ袋に青いネットが被さっているのを見て、まるで妊娠した妊婦の腹のようだと感じていたのか、ため息を吐いていた。しばらく凝視したのちに、それがメロンに似ていることに気がついたのか、手元のメモには「メロン、妊婦、そしてゴミ袋」と書かれていた。なるほど、メロンの網目模様は瘡蓋であり、果実の内部の成長速度と皮の成長速度のずれによって生まれるから、妊婦の腹を連想するのは正当かもしれない。先日、僕が村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を読んでいたことも、赤ちゃんとゴミの関係を連想させる鍵になったのだろう。僕が描く文章を見ると、メロンが自転車の車輪によって股の裂け目に変貌しているから、この文章は誕生の瞬間を意味しているのかもしれない。僕はこう書いていた。
山地大樹
めろんの夢
思い切り自転車を漕いで国道を駆けてゆく。心臓が脈打って汗が滲み出す。全身が熱くて死んでしまいそうだ。ペダルを漕ぐのを辞めたい。辞められない。加速が加速して加速してゆく。止めない。止まらない。恐ろしい速度。線になる。全部が線になる。世界の全部が線になる。溶ける。全部が溶ける。世界の全部が溶ける。めろん。めろん? めろん。めろん! めろんだ! めろんが転がってくる! 避けろ。避けられない。死ぬ。死にたくない。死ぬ! 死ぬ! 死ね! 死ぬぞ! 漕げ! 漕げ! はやく! ブレーキなんて死んでしまえ! 車輪がめろんに喰い込む。時が止まる。二つに割れる。尻! 尻だ!破裂する。汁が飛び散る。宙に舞う。宙に舞っている。飛ぶ。飛んでいる。何処へ?
季山時代
2024.01.20